LGBT・マイノリティ
世界で進むLGBT関連の法整備と日本の現状
現在、世界ではLGBT関連の法整備が進んでいます。
そして、日本でも取り組みや法整備が進みつつありますが、世界に後れをとっているといわれています。
そこで、今回は世界で進んでいるLGBT関連の法整備と日本の現状について詳しく紹介します。
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目次
世界でLGBT関連の法整備が進んでいる
世界ではLGBT関連の法整備が進みつつあります。代表的なものとしては以下の3つが挙げられます。
- 同性婚法
- 差別禁止法
- トランスジェンダー法
なかでも「トランスジェンダー法」は日本でも認められている法律です。それぞれの法律がどのような内容なのか、メリットやデメリットは何か、1つずつ詳しくみていきましょう。
同性婚法|同性同士の結婚を認める法律
同性婚法とは、男性同士や女性同士というように、同性同士の結婚を認める法律です。なかには結婚ではなく、同性カップルが一般的な夫婦と同様の法的保障を受けられる「パートナーシップ法」を定めている国もあります。
同性婚法および一般的な夫婦と同様の法的保障を受けられるパートナーシップ法を定めている国・地域は、2023年2月時点で世界の約22%にものぼります。
同性婚法の先駆けとなったパートナーシップ法は、1989年にデンマークで初めて定められました。その約10年後となる2001年には、オランダで初めて同性婚法が定められ、同性同士が法律上の夫婦になることが実現しました。
しかし、日本では未だ同性婚法は定められていません。
出典:NPO法人 EMA日本「世界の同性婚」
出典:公益社団法人MarriageForAllJapan「世界の同性婚」
同性婚法のメリット・デメリット
同性婚が法的に認められれば、同性カップルが相続・親権・税制といった公的な権利を享受できるようになり、セクシャルマイノリティに対する理解が広がるといったメリットも期待できます。
同性婚法のデメリットとして少子化が進むという意見が主張されていますが、同性婚と少子化の明確な因果関係は認められていません。そもそも同性婚を望む方は、子供を希望しない傾向なので、同性婚が認められる、認められないは関係ないと思います。少子化問題は全く別の問題です。
ただ、同性カップルが生物学的に2人の子どもを持つことはできないものの、養子縁組・代理出産・精子提供など、同性カップルが子どもを持つことは可能です。
LGBT差別禁止法|セクシャリティを理由とした差別や暴力を禁止する法律
性別・人種・障害などを理由とした差別や暴力を禁止する法律のことを差別禁止法といい、なかでも性的指向や性自認による差別を禁止する法律を「LGBT差別禁止法」と呼びます。
性的指向や性自認は自分で選択することができないにもかかわらず、LGBTというだけで差別を受けることがあるというのが現状です。
このような問題を解決すべく、EU加盟国・アメリカ・オーストラリアなどの先進国においてはLGBT差別禁止法が制定されており、グローバルスタンダードな法律となりつつあります。しかし、日本では現在もLGBT差別禁止法は制定されていません。
LGBT差別禁止法のメリット・デメリット
LGBT差別禁止法の制定によるメリットは、LGBTに対する理解が広がる点や守られる人が増える点などです。
現在、LGBTをはじめとするセクシャリティを理由に差別を受け、誰にも相談できずに孤立するケースや、最悪自分の命を絶つケースもあります。このような差別が繰り返されぬよう、法律というルールで差別を禁止することが求められています。
しかし、LGBT差別禁止法によって問題が起こっているというのも現状です。
例えば、アメリカの多くの州では、高校運動部の大会参加規定で、トランスジェンダーの生徒が自認する性での参加を認めています。
しかし、高校女子陸上大会において、トランスジェンダーの女性生徒が自認している性で参加した際、シスジェンダー(性自認と生まれ持った性別が一致している人)女性から「生物学的に不利だ」「優勝する機会を失い奨学金をもらえない」などの理由から訴訟を起こしたのです。
このように、LGBTによる差別を禁止する一方で、シスジェンダーが不利益を被るケースがみられるため、すべての人が平等に扱われるための基準や法律を制定するには検討を重ねる必要がありそうです。
トランスジェンダー法|自認している性に戸籍を変更できる法律
トランスジェンダー法とは、トランスジェンダーの人が自認している性を戸籍上の性にしたいと希望した際、戸籍の性別を変更できる法律です。
日本でも認められている法律ですが、性別を変更するには以下すべての条件を満たす必要があります。
- 2人以上の医師から性同一性障害と診断されている
- 18歳以上である
- 現在婚姻していない
- 現在未成年の子どもがいない
- 生殖能力を永続的に失った状態である
- 他の性別の性器の部分に近似する外観を備えている
このように、トランスジェンダー法には性別変更に際してさまざまな条件があり、条件は国によって異なります。
例えば、オランダやノルウェーの年齢要件は16歳であり、アルゼンチンでは18歳未満であっても一定の条件を満たせば性別を変更することが可能です。また、非婚を条件とする国が多かったものの、同性婚を認めた国では非婚要件を廃止する動きもみられます。
さらに、日本では未成年の子どもがいないことが条件になっていますが、海外のトランスジェンダー法では子なし要件を採用している国はありません。
トランスジェンダー法は日本を含め認められている国が多い反面、性別変更の条件は国によって大きく異なることが分かります。
トランスジェンダー法のメリット・デメリット
トランスジェンダー法によって、トランスジェンダーの方が自認する性で暮らすことができるようになるというメリットがあります。
「生まれたときの性別で生きるのが辛い」「身体的性と自認する性が異なることを理由に仕事が見つからない」といった状況を打破するきっかけになり、自認する性で婚姻することも可能です。
ただし、日本におけるトランスジェンダー法は、戸籍の性別を変更する際、「生まれ持った生殖能力を失うための手術が必要」という条件があります。性別適合手術は身体への負担が大きく、本来強制されるものであってはなりません。
そのため、日本でも「手術要件」が憲法に違反するのではないかという訴えが上がり、最高裁判所によって「戸籍上の性別を変更する際に生殖能力を失わせる手術を義務とすることは違憲である」と決定された事例もあります。
日本でも「LGBT理解増進法案(LGBT法案)」が施行
LGBT理解増進法(LGBT法案)は、LGBTをはじめとするセクシャルマイノリティへの理解を広げることを目的とした法律です。
2023年6月16日に国会で成立し、同月23日に施行されました。具体的には国や自治体に対してセクシャルマイノリティへの理解を広げるための取り組みを求め、性の多様性を受け入れられる社会実現を目指すという内容です。
当初、LGBT法案は2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピック前の成立を目指していましたが、自民党内の反対の声が根強く、国会への提出が見送られました。
2023年6月の成立・施行は、広島で行われたG7サミットがきっかけでした。G7のなかで日本だけが同性カップルを家族と認める法的保障がなく、他国に遅れをとっていることが目立ってきたためという背景があります。
このように、LGBT法案は最初に法案がまとめられた2016年から約7年もの長い期間をかけて成立・施行に至りました。
LGBT法案の成立で同性婚できるようになる?
LGBT法案は成立・施行されたものの、現在の日本では未だ同性婚は認められていません。「現行法で同性婚ができないのは違憲状態」と訴える意見が増えていますが、LGBT法案では同性婚は認められず、失望・落胆する声も少なくありませんでした。
全国各地でパートナーシップ制度を取り入れる自治体が増えているものの、都道府県単位でみるとわずか12都道府県でしか導入されていません。
また、パートナーシップ制度は一般的な結婚とは異なり、法的保障を受けられるわけではないため、制度の改善や同性婚を求める声は高まっています。
セクシャルマイノリティの方には「友情結婚」という選択肢も
セクシャルマイノリティの方が結婚する方法のひとつに「友情結婚」が挙げられます。
友情結婚とは、恋愛関係ではなく友情や愛情といった気持ちのつながりのもとで婚姻関係を結ぶことです。一般的な恋愛結婚とは異なり、友情結婚では夫婦のあいだに性行為がありません。
「他者に性的欲求を抱かない」「性的な行為に嫌悪感がある」といったセクシャリティの方が友情結婚を希望されます。
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ただし、友情結婚はあくまでも身体的性が男性と女性での結婚を指します。自認する性は関係ありませんが、身体的性が同性同士のカップルは友情結婚もできないのが現状です。
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