日本のLGBT教育の現状とは?世界との違いや課題を解説

投稿日

2024.10.21

更新日

2024.10.18

多様性への認識が変わり始め、日本のLGBT教育も変化してきました。2024年度から使用されている小学校の教科書では、LGBTなど性の多様性に関する言及が大幅に増え、教育現場でのLGBTに関する意識が高まってきていると感じられます。

今回は日本におけるLGBT教育の現状と現在に至るまでの流れや世界のLGBT教育、日本のLGBT教育の課題について解説します。

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子どもの間にLGBT教育を行うことにどのような意義があるのでしょうか。2つの意義を解説します。

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知識を得る機会ができる

多様性について知識を得る機会となるため、性を男女だけの枠で考えるのではなく、幅広く考えられるようになります。

多様性を知ることで、さまざまな人がいることを知ることができ、差別的な発言の抑制にも繋がるはずです。自分の思う「普通」が他人の思う「普通」と同じとは限らないこと、そしてさまざまな人を受け入れることの大切さを学ぶ機会となります。

結果的に「その人らしさ」を大切にできる人が育つということが考えられます。

セクシャリティは人の数だけ存在するとも言われるほど、複雑で多種多様です。そのためそれぞれのセクシャリティを理解することは簡単ではありません。

異性愛者であっても、人によって感覚が異なり、価値観やその人のバックグラウンドも異なります。他人の全てを理解しようとすること自体が無理なことです。

LGBT教育は、自分の価値観が全てではないということ、そして他の人の「普通」とは異なっていることを知り、さまざまな人がいることを理解する機会になります。

当事者の不安を軽減できる

自分の性に違和感を感じていたとしても、多様性に関する知識がなければ自分の感じている違和感を消化できず、ストレスを感じてしまいます。さまざまな人がいることを知ることで、自分自身のことを考える機会にもなるでしょう。

また、現状のLGBT教育では、結婚は一般的な結婚・制度化されていない同性婚・事実婚ぐらいしか教えられません。

一般的な結婚というと、好きな人と結婚する恋愛結婚がイメージされますよね。婚姻制度には、恋愛の有無は関係ありません。しかし「一般的な結婚=恋愛結婚」と捉える人が多く、さらに結婚相手と性的な行為をともなうことが一般的です。

このような一般的な結婚・同性婚・事実婚の狭い選択肢だけでは、結婚を諦めてしまう人は多いものです。しかし、この選択肢に友情結婚という新たな選択肢を加えると、結婚の幅が広がります。

LGBT教育を充実させることは、LGBTの人のさまざまな不安を減らすことに繋がるはずです。

日本におけるLGBT教育は、2015年に「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」という資料が教職員向けに発出されたことから始まりました。

以下は日本における2024年までの大まかなLGBT教育の流れです。

  • 2010年:文部省から教育委員会への事務連絡として「児童生徒が抱える問題に対しての教育相談の徹底について」の発出
  • 2015年:「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」を発出
  • 2017年:旧来の学習指導要領における「思春期になると、だれもが、遅かれ早かれ異性に惹かれる」の記述を変えようとする運動が起こる(しかし現指導要領には反映されず)
  • 2021年:中学校の教科書で性の多様性への言及が大幅に増える
  • 2022年:「生徒指導提要」の改定により「性的マイノリティに関する課題と対応」が追加される。高校1、2年生が使用する教科書でLGBTに関する記述が増える。
  • 2024年:小学校の教科書で性の多様性への言及が大幅に増える

2003年に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が成立し、一定の条件を満たせば戸籍上の性別を変更することが認められるようになりました。

この法律の成立以降、教育現場で性に悩む児童・生徒が多くいることが確認され、2010年に「児童生徒が抱える問題に対しての教育相談の徹底について」が発出されています。

さらに、2015年には「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」が発出され、具体的にどのような対応を行うべきかなどが明示されていました。

2017年には、小学校・中学校・高等学校ごとに、それぞれの教科などの目標や教育内容を定めた学習指導要領が改定されました。2017年の改定の際に「LGBTに関する指導を内容に入れてほしい」という声がありましたが、多様性について盛り込まれることはありませんでした。

2017年の改定から2024年現在もなお、使用されている学習指導要領にはLGBTについて盛り込まれていません。しかし昨今の多様性が広がってきた社会状況から、教科書の見直しが進んでいます。

2021年に中学校の教科書で多様性に関する言及が大幅に増え、2022年には小学校から高校までの生徒指導に関わる基本書である生徒指導提要に「性的マイノリティに関する課題と対応」が追加されています。

さらに2022年に高校1、2年生の教科書でLGBTに関する記述が増え、2024年には小学校の教科書で多様性に関する言及が大幅に増えました。

2017年の学習指導要領の改定の際にはLGBTに関する項目が盛り込まれることはなかったものの、年々教科書へ多様性に関する記述は増えています。

現在のLGBT教育では、結婚は一般的な結婚と制度化されていない同性婚、または結婚ではなくパートナーシップ制度の3つの選択肢しか教えられていない状態です。この選択肢だけでは、結婚の選択を諦めてしまう人も多いでしょう。

しかし友情結婚という新たな選択肢ができれば、結婚の選択を取れる人は増えるかもしれません。友情結婚とは、恋愛関係にない者同士で性愛とは異なった愛情やと信頼関係を結ぶことで結婚することを指しています。

子どものうちから多様性について幅広い考えを持ち、友情結婚を知ることで、結婚を諦めず、自分らしい結婚の選択ができる人が増える可能性があります。

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世界ではどのようにLGBT教育が行われているのでしょうか。6ヵ国のLGBT教育について紹介します。

オランダ

オランダはLGBT教育先進国と言われている国です。初等教育で必須科目に「セクシュアリティと性的多様性」という項目が入っており、セクシャリティなどについて学びます。

LGBTの擁護団体による授業を受けるなど、中等教育でもLGBT教育を行っています。

スウェーデン

スウェーデンでは、LGBT教育を行うことが義務付けられています。さらに、未就学児へもLGBT教育を行っていることが特徴的です。

小さな頃からさまざまな人を受け入れることの大切さを学んでいます。

フィンランド

フィンランドは、性別に関わらず全ての人が平等に生きられる社会を目指しています。平等な社会を実現するために、人間生物学と健康教育の2科目でLGBT教育を行っています。

多様性を巡る歴史背景から、現在の同性婚や社会的制度を学ぶ教育が特徴的です。

スコットランド

2021年にLGBT教育を行うことが義務化され、年齢に合ったLGBT教育が行われています。インクルーシブ教育によって、子どもは親の同意なしで、学校内で使用する呼び名と性別を変更可能です。また、教育現場だけでなく、社会全体で性別に囚われないジェンダーニュートラルを進めています。

フランス

2013年に「みんなのための結婚法」が成立し、科学の生物領域という科目でLGBT教育が行われています。科学の生物領域では、セクシャリティや性自認など幅広く多様性について教えられています。

フランスは同性愛者を抑圧していた過去があり、過去の歴史も含めた教育も盛んです。

アメリカ

2011年に、歴史の科目でカリフォルニア州でLGBT教育を行うことを公立学校に義務付ける法律が成立しました。しかし教育現場では、どのように教育すればよいか分からないといった声が多く、教育者にLGBTの知識がない人が多い状態であることが問題視されています。

また、アメリカでは同性愛者に対する嫌悪感を抱く傾向があり、LGBT教育があまり進んでいません。

日本ではLGBT教育が始まったばかりです。今後のLGBT教育には、どのような課題があるのでしょうか。

教員のLGBTに関する理解不足

日本だけでなく、アメリカでも問題になっているのが教員のLGBTに関する理解不足です。

LGBTについての知識が少なく、何をどのように指導するべきか定まっていない人が多くいます。また、学習指導要領に記載されていないため、教えにくさがあるのかもしれません。

生徒指導において「女らしく」「男らしく」という指導を行っている教員もおり、子どもに対してジェンダーに関する考えを植え付けていることがあります。

LGBT教育を進めていくには、教員自身がLGBTに関する知識を増やす必要があるでしょう。

制服や体操服などの選択肢が少ない

現在は、制服や体操服、水着などに選択肢が少ない状態です。基本的には、男性用・女性用の2種類しかありません。男女で分けてほしくない人には、男性用・女性用だけではなく、違った選択肢を増やし、誰もが自由に選べるようになるとよいですね。

誤った形で「多様性」が広まっているのでは?

「多様性」という言葉が広がっている一方で、多様性が間違った形で広がっている傾向があります。

LGBT教育が間違った形で行われると、一方的な平等を広めることになってしまうなど、多様性の強要が行われる可能性も。

また、世界では子どもの間に性に違和感を感じ、12歳以下の未成年の間に親に報告することなくホルモン注射などを行ってしまうという事案も起きています。間違ったLGBT教育によって、自分の性を誤った方向で自認し、そのうえ、ホルモン注射や手術などを親に報告することなく進めてしまうことが起こり得るのです。

LGBT教育の本質は、一人一人のその人らしさを尊重できることにあります。ゲイだから、レズビアンだからというようにセクシャリティで括って考えることが大切なのではありません。むしろ「○○だから」のように括って考えることを辞め、人それぞれ違うという事を理解する必要があります。

性はグラデーションといわれているように、思春期に感じたことが今後変わる可能性があります。自分はこうだ!と枠の中に自分を当てはめようとはしないで欲しいと願っています。

多様性という言葉だけが一人歩きしないように、その人らしさを尊重できるような考えが広がることが大切です。

現在の日本はLGBT教育がまだ始まったばかりで、教員の知識不足などさまざまな課題を抱えています。多様性について正しく学び、他人や自分に男女だけでない選択肢があることを知り、一人一人を尊重できるようになることが大切です。

また、その中で友情結婚という選択肢を知ることができれば、結婚に対する選択肢を増やせます。LGBTだから結婚を諦めなければならないという人が減り、誰もが自分らしい選択ができる社会になることが望まれます。

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著者:代表中村

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