環境・立場・年齢で異なる悩みとは【ドラマ『瓜を破る』の感想】

投稿日

2024.12.07

更新日

2024.12.04

著者:まつもとしおり

ドラマ『瓜を破る~一線を越えた、その先には』は、人気漫画を実写化した作品です。環境や立場、年齢によって異なる悩みを抱える人たちが、悩みと向き合っていく姿が描かれています。

今回は、ドラマ『瓜を破る』のあらすじやキャストとともに、観て感じたことや感想をまとめました。感想にはネタバレを含みますので、まだ観ていない方は注意してご覧ください。

ドラマ『瓜を破る~一線を越えた、その先には』は、30代で未だ初体験を済ませていないことに悩む香坂まい子が、自分を変えようと男性との関わり方を探りながら、心に抱える葛藤と向き合っていく物語です。

香坂まい子をとり巻く染井菜々・原幸成・小平蓮・味園美由紀の4人が、家族との関係性やセクシャリティ、ルッキズム、事実婚といったさまざまな悩みに向き合う群像劇にもなっています。

ドラマ『瓜を破る』のキャストを登場人物とあわせて紹介します。

  • 久住小春(香坂まい子)
    • ごく普通の会社員。30代で未だ初体験を済ませていない、いわゆる「高齢処女」であることに悩んでいる。
  • 鍵谷千里(佐藤大樹)
    • OA機器管理会社の契約社員。人と関わることが苦手で、過去に夢破れた経験がトラウマになっている。
  • 染井菜々(土村芳)
    • 香坂まい子の同僚。仕事・家事・育児を両立するという忙しさから、学生時代からの趣味には時間を費やせず、「母親」という周囲からの見られ方に戸惑っている。
  • 原幸成(泉澤祐希)
    • 香坂まい子の同僚。5年付き合っている恋人がいるものの、自分がノンセクシャルであることに気づき、恋人との関係に悩んでいる。
  • 小平蓮(石川瑠華)
    • 香坂まい子と同じ会社に勤務する派遣社員。外見がコンプレックス。マッチングアプリで出会いを求めるも、いつも一夜限りの関係で終わってしまうことに悩んでいる。
  • 味園美由紀(酒井若菜)
    • 香坂まい子の上司。10年同棲している恋人がおり、事実婚状態。しかし、仕事を優先し恋人と向き合わなかったことで、突然恋人に去られてしまう。

ドラマ『瓜を破る』を通して感じたのは、きっとこの世には、周りに打ち明けられない密かな悩みを抱えている方が大勢いるのだろうということです。環境が違えば悩みも違う、そして人によってさまざまな悩みを抱えながら、その悩みと向き合っているのだと思います。

ここからは、ネタバレを含むドラマ『瓜を破る』を観た感想をまとめています。まだドラマを観ていない方は、注意してご覧ください。

高齢処女に悩む人は多い?

主人公である香坂まい子は、ごく普通の会社員でありながら、密かに「高齢処女」であることに悩んでいました。

「高齢処女」という言葉が気になり調べたところ、高齢が示す年齢に明確な定義はなく、30~40代以上で性経験のない女性を指すと考えられているようです。

ドラマのなかでも「最近多いらしいじゃん高齢処女」というセリフがありました。実際、高齢処女に悩む女性は少なくないのかもしれません。しかし、高齢処女という悩みは人に相談しにくいと感じる方が大半なのではないでしょうか。

そのため、1人で抱え込み、「周りにはできていることが自分にはできていない…」と自己嫌悪してしまうこともあるのだろうと感じました。

環境や立場によって抱える悩みは異なる

このドラマの登場人物は、環境や立場が異なり、それぞれの悩みを抱えています。

例えば、まい子は「高齢処女で、早くセックスした側になりたい」と悩んでいて、同僚の染井菜々は「家族がいることで自由がない」と悩んでいます。このように、環境や立場によって抱える悩みは異なるでしょう。

ここで感じたのは、自分の悩んでいる状況が誰かにとっては羨ましいことかもしれないということです。

まい子は結婚して子どもがいる菜々をセックスした側の人として羨んでいる一方で、菜々は結婚しておらず自由に生きられるまい子や同僚を羨んでいるように感じました。つまり、知らず知らずのうちに、お互いがお互いを羨んでいるのかもしれないと思ったのです。

また、仕事・家事・育児を両立する菜々に対して周りが「お母さんだから無理しないでね」といった声かけをするシーンがあります。

声かけをしている人はあくまでも優しさで言っていると思います。しかし、菜々は「子どもがいるだけ、変わったのはそれだけなのに、なぜみんな私を母親として見るの?」と戸惑いを感じていました。

私自身も母親になった友人に対して似たような声かけをした経験があり、「あれは本当に友人のためになっていたのだろうか」と考えさせられました。

このように、悩みは人それぞれで、自分にとっては優しさであっても、本人が優しさとして受け取れないこともあるのかもしれません。

理解してくれる人がいるという安心感

まい子の同僚である原幸成は、5年以上付き合っている恋人がいて、「好きだけどセックスをしたいと思わない」という悩みを抱えていました。そんな原は、他者に恋愛感情を抱くものの性的欲求を抱かない「ノンセクシャル」というセクシャリティがあることを知ります。

この一連の話をまい子に話すシーンでは、原がノンセクシャルというセクシャリティがあることを知ったとき、「これって俺じゃん」「俺以外にもいたんだ」というセリフと表情から、原が安心感を覚えているように感じました。

「自分だけかもしれない」と思っていたことが、「実はほかにも同じような人がいるんだ」とわかるだけで、当事者にとっては大きな安心感につながるのかもしれません。

また、帰り際にまい子と原がハグをする際、原は「こういう触れ合いはむしろ好きなのに」と言います。

きっと同じノンセクシャルでも「ハグすらしたくない」と思う人もいるでしょう。つまり、セクシャリティが同じであっても、感じ方は人それぞれであり、セクシャリティは人の数だけあることを再確認させられました。

自分がいっぱいいっぱいになると人の痛みに気づきにくい

まい子の上司である味園美由紀は、同棲している恋人にキャンプへ誘われますが、「仕事が優先」と断るついでに、職場でのイライラをぶつけてしまいます。

確かに仕事を頑張りたいという気持ちは理解できますが、そのイライラを恋人にぶつけることは、観ていてモヤモヤしました。

ただ、このシーンで感じたのは、自分が日々のストレスや忙しさでいっぱいいっぱいになっているときは、人の優しさを素直に受け入れたり、人の痛みに気づきにくいのかもしれないということです。

味園は「近くで自分を見てくれている人だからこそ甘えてもいい」=「イライラをぶつけても大丈夫」と思い込んでいたのではないでしょうか。しかし、相手も人間です。無関係のイライラをぶつけられれば、傷つくでしょう。

生きていれば、人に頼りたくなることもあります。ただ、頼り方次第では、無関係の相手にストレスを与えたり傷つけたりするかもしれません。そのため、自分の気持ちに素直になって、相手を傷つけずに頼ることができればと感じました。

考えているだけでは伝わらない

味園がもともと仲が良かったにもかかわらず関係が悪くなってしまった元同期と、お互いにこれまで考えていたことを話すシーンがあります。

ここでは、相手と分かり合えないと感じたときは、「相手が思っていることを考えようとすること」「自分が素直になること」の2つが大切なように感じました。

この2つを意識してやってみることで、相手との関係がうまくいくことがあるだろうし、周りが支えてくれるかもしれません。

実際、味園は元同期と関係を戻したあと、まい子に職場での言い過ぎを謝罪したり、恋人を探して自分の気持ちを素直に伝えたりします。そうすることで、職場の後輩から協力してもらえるようになり、味園の恋人もその気持ちを素直に受け止めてくれました。

一方で、まい子と鍵谷千里はお互いに自分の気持ちを伝えられず、考えていることをうまくつかめないために、関係性に悩んでいました。

このように、お互いが考えていることは言葉にしないと伝わりません。もし言葉にすることが難しいと感じたときは、相手の思っていることを考えようとすることから始めようと思います。

悩みやトラウマから自信を失い、不安につながる

鍵谷は、棋士になる夢を叶えられなかったという過去がありました。まい子が高齢処女に悩むも周りに打ち明けられないのと同様に、人にはそれぞれの過去があって、トラウマを抱えていることもあります。

まい子と鍵谷に共通するものとして、人に打ち明けづらい悩みやトラウマが自信を喪失させ、自信のなさから不安を感じていることが挙げられます。

ただ、お互いが素直な気持ちを伝え合ってからは、恋愛している姿が楽しそうで、少し自信につながっているのではないかと感じました。

また、まい子と鍵谷は恋愛がエネルギーに変わっているように見えました。しかし、当然かもしれませんが、恋愛がすべてではありません。菜々のように家族の存在が、味園のように心から信頼できるパートナーの存在がエネルギーに変わっていることもあります。

不安や自信のなさをどうにかしたいと感じたとき、「周りはこうしているから」ではなく、「自分には何が必要なのか」「何を大事にしたいのか」を考えることが重要なのかもしれません。

誰かの気持ちをわかることは痛いこと

最終話でまい子は以下のように話します。

  • 「誰かの心に近づくって痛いことなんだ」
  • 「痛みの先にはきっと続きがある」
  • 「だから私は、今日も傷を作りながら、それでも前に進んでいきたい」

ドラマ全体を通して、正直な気持ちを誰かに話すことは勇気がいることだと感じました。勇気を出して話してみて、自分が傷つくこともあるかもしれません。

ただ同時に、勇気を出して話すことで、相手とわかり合えることや気持ちが楽になることもあるのだと考えさせられました。

「誰かとわかり合うには自分が傷つくかもしれない、それでも前に進みたい」と感じたときは、勇気を出して正直な気持ちを話してみてもよいかもしれません。

ドラマ『瓜を破る〜一線を越えた、その先には』は、シリーズ累計400万部を突破した板倉梓の人気漫画『瓜を破る』が原作です。

また、レビューサイトFilmarksでは、「原作のほうが面白かった」という意見もある一方で、「原作で伝えたいことがドラマでも丁寧に描かれている」「不器用に生きる大人たちを応援したくなる」など、ドラマを評価するコメントも数多く残されていました。

このドラマを通して、自分のわからないところで悩んでいる人が近くにもいるかもしれないと考えさせられます。まだドラマを観ていない方は、ぜひこの機会にご覧ください。

ドラマ『瓜を破る』は、環境や立場、年齢が異なる登場人物がそれぞれの悩みを抱え、その悩みと向き合う物語でした。

自分では考えもしないようなことに悩んでいる人がいるのだと気づかされたと同時に、登場人物と同じような悩みを抱えていると共感する人も多い作品ではないかと思います。

また、「なかなか素直になれない…」「だけどいざ正直な気持ちを話してみるとわかり合えた」といったシーンが多く、勇気を出して話してみることも大事なのだと印象に残りました。

人に打ち明けられない悩みを抱えていると感じる方は、登場人物に共感できる部分があるのではないでしょうか。また、自分が悩みを抱えていなくても、人の痛みを知ったり身近な人の悩みに気づけたりするきっかけとなるかもしれません。

ドラマ『瓜を破る』は、Netflixにて全話配信中(2024年11月現在)です。この機会にぜひご覧になってみてください。

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まつもとしおり
著者:まつもとしおり

Webライター4年目。BtoBマーケティングや不動産関連など、複数のWebメディアで記事制作を担当。 読者に伝わる言葉を大切に、より多くの方に価値ある情報を届けてまいります。

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