Vol. 17

友情結婚当事者のNHK「ねほりんぱほりん」感想

投稿日

2023.03.04

こんにちは。カラーズに入会し、友情結婚(成婚退会)しました、佐藤です。
カラーズブログでもご紹介されていましたが、3月4日(金)の22時よりNHKの「ねほりんぱほりん」という番組で友情結婚が紹介されました。
実際に友情結婚をされた出演者さんが、その背景や経緯、結婚生活について語られています。その影響か、ツイッターのトレンドに「友情結婚」が上がったりしていましたが、拝見していると賛否両論であったのも事実でした。30分という短い時間の中で、友情結婚の有り方をすべて理解してもらうのは難しく、正直「その点は誤解だ」と思う意見も多いように感じました。
友情結婚当事者が観た感想を、思ったままに書いてみたいと思います。
一部、番組の内容がネタバレになるかと思いますので、予めご了承ください。

目次

お相手との出会いの話

出演者さんは友情結婚相談所でお相手を見つけて友情結婚されています。
まず、「わかるわかる!」と思ったのが、お相手の方をいいなと思っていても「もっと他にいい人がいるのではないか」と考えて成婚退会を躊躇してしまったというお話でした。
私も当時、高橋さんがいいなと思っていた一方で、まだ活動と続けていれば良い人が見つかるかもと思い、成婚退会を念頭に入れつつも、いくつか他の方もご紹介していただいていました。
私の場合は、ご紹介いただいたことで「やっぱり高橋さんより合う人がいない」と強く思ったり、「こういう時、高橋さんならこうしてくれるのにな」と比べてしまっていることに気づき、私には高橋さんが合っているんだろうなと確信しました。

お相手の選び方の話

出演者さんは、ゲイで女性に恋愛感情はないものの、容姿は好みであって欲しいと仰っていました。
私は活動の中で容姿はあまり気にしてはいなかったのですが、正直なことを申し上げると、できれば容姿が良い方が良いですよね(笑)容姿がネックになってお断りするということはなかったのですが、友情結婚するということは、この先少なからず長い間一緒に過ごすことになりますので、ある程度容姿は好みな方がいいなぁとは思っていました。
また、もし自分の好みでない容姿の方を選んだ場合、他の方から「好みの顔だっけ?」と疑問に思われたり、「どこが好きなの?」なんて聞かれたときに少し戸惑うのかもしれないなとも思いました。
また、結婚相談所で初めてお会いするときは「自分の将来の結婚相手かもしれない」と思って会いますので、自ずと容姿への加点ポイントというのも大きくなるのではと思います。恋愛感情が無い分、冷静に「自分に見合う人か。周りに結婚相手と紹介して恥ずかしくないか」という視点があるのも事実ではないでしょうか。

恋愛感情が無い分、シビアに考える

ツイッターでも議論が巻き起こっていたのが、この点だったように思います。
出演者さんはお相手よりも収入が高く、その分お相手の方が家事を多く分担されているそうです。一方で、出演者さんが家事を多くしてしまう時もあり「これって不平等では」と思うこともあるのだとか。
私としては、「わかる!」という感情でした。これは友情結婚に限らず、恋愛結婚でも当てはまるのかなとも思ったのですが、意外とSNSでは「妻側へのリスペクトがない」「(前述の容姿の点も含めて)妻側への要求が多すぎ」「妊活等は妻側の負担が大きいのだから、家事くらいして欲しい」という意見もあり、なるほどな~と思いながら見ていました。
恋愛結婚だったら、相手のことが好きだから尽くそうという気持ちがあり、家事も相手の分もしてやろうという気持ちになるのでしょうか。その点でいくと、出演者さんも私もシビアなのかもしれません。その家事はあなたの担当でしょ?という意識が強いように思います。
これは個々人によるかと思いますが、出演者さんと違い、女性側でかつ収入もお相手よりも低い私は、特にリスペクトがないとも、要求が多いとも感じませんでした。むしろ、友情結婚は対等な立場であることが多いので、私の分の家事もしてもらって申し訳ないなと思っていました。私は自立していたい、相手に頼りたくない、対等でいたいという気持ちが強かったので、高橋さんが良かれと思って家事をしてくれることが苦しくもありました。
出演者さんのお相手が「家事をしてもらって当たり前」というスタンスであったら話は別ですし、妊活でお相手の体調が辛いときは出演者さんがカバーしていたりと、番組内では語られなかった背景もきっとあるのかもしれませんね。

友情結婚でも大事にして欲しい

出演者さんのエピソードで、結婚して3日目にお相手の方に作っていただいた簡素な料理を見て「もし自分が相手にとって好きな人だったら、これは出さないだろうな」と思いショックだったとお話されていました。
お相手の方の話を聞いていないのでわかりませんが(体調が悪かったとか、色々あるのかもしれません)、私が同じ立場でもショックだろうなと思います。
私は高橋さんに恋愛感情はありませんが、尊敬や、感謝の気持ちはあります。もし食事を作ったときに、どちらか一つを失敗してしまったら、私が失敗した方を食べます。仕事が間に合わなかったりして少し家事が疎かになってしまったり、簡単な料理になってしまった時は「ごめんね」と言いますし、高橋さんからは「いつもありがとう」という言葉をもらいます。逆の状況でもそうです。
恋愛感情はなくても相手を大事にする気持ちは必要だと思います。とはいえ、私は「高橋さんを大事にしないと!」と意識しているわけではなく、一緒に生活していくと困難なことだったり、一緒に乗り越えないといけない壁もあり、そういうものを共にクリアしていくことで絆が深まったという感じがします。
特に今は子どもがいるので、家族というか戦友というか、一緒に頑張る仲間みたいな感覚で日々過ごしています。

子どもには隠し通す

出演者さんは、友情結婚という形について子どもには隠し通すとお話されていました。私も同じく、子どもにはセクシャリティを含めて話すつもりはありません。
それを聞いたタレントのYOUさんが、「一緒に住んでいて、子どもが自分を守ってくれる存在だと理解してくれているのであれば、あえて言う必要はないし、それはもう家族」という風なことを仰られていて、とても嬉しかったです。
私は妊活中の出演者さんと違い、もう子どもがいます。自分たちの親だけでなく、学校の先生や子どもの友達の親など、第三者にも会う機会はたくさんあります。けれど、その日々の生活の中で「友情結婚だから気を付けないと」と考えたことは全くありません。普通に過ごしていますし、周りと自分たちが違うと感じたこともありません。
恋愛結婚であっても、子どもに自分たちの性生活は話しませんよね。子どもの前でいちゃいちゃしない親もいますし、手を繋がなかったり、寝室が別の夫婦も普通にいます。
私もYOUさんと同じく、出演者さんには「あまり考えなくても大丈夫では?」と伝えたいです。子どもに愛情が伝われば、何の問題もありません。隠さないと!という意識がなくとも、少なくとも我が家は全然大丈夫です。

友情結婚を選ぶ理由

番組の中で「もし同性婚が制度として認められたら」という話もありました。それでも出演者さんは、周りの目が制度化に追いつかないという現状もあり、今の社会においては友情結婚という選択肢がベストだったと話されていました。
出演者さんはゲイのため、同性婚という可能性もこの先なくはないですが、私のようなノンセクシャルの場合はそれはありません。出演者さんが、異性からアプローチされたときに申し訳なかった、と仰っていたのもよくわかります。私の場合は異性は好きになれても、性行為ができないので、なおさら「何故?」となりがちです。
ノンセクシャルの私にとって、友情結婚という選択肢は救いでした。相手を傷つけなくていいし、自分も傷つかなくていい結婚があるんだ、と安心したのを覚えています。もちろん、恋愛感情が無い分難しいこともありますが、少なくとも今も、今までも、友情結婚したことを後悔したことはありません。

友情結婚は偽装結婚?

SNSでは、出演者さんが結婚相談所を経て結婚したという経緯を踏まえて「そこに友情はない」「偽装結婚では」というお声も多かったです。
友情結婚と聞くと、言葉が言葉なだけに、仲の良い友達同士で結婚するというイメージがあるようですね。確かにそれを考えると、「偽装結婚」と思われてしまうのかもしれません。また、ゲイやレズビアンの方には結婚相手以外にパートナーや好きな人がいる可能性から、「偽装結婚」と言われることもあるようです。
あくまで「友情結婚」というのは表現の話で、本質はシンプルなのかなと思います。ただ相手に対する恋愛感情と性行為がないだけの結婚です。通常の結婚を恋愛結婚というなら、この結婚に名称を付けるなら…うーん、なんでしょうか。やっぱり友情が近いのかなという気もします。
「偽装結婚」と言われると正直傷つきます。結婚という制度を偽装しているという意味であればそうかもしれないのですが、結婚という法的な縛りによって得られた家族のかたちは、何の嘘もないからです。私と高橋さんはお互い以外にパートナーがいませんが、もし居たとしても、結婚相手を尊重して家族としての気持ちがあれば、それは一つの家族のかたちであり「偽装」ではないのかなとも思います。夫婦+パートナーの3人ないし4人で子どもを育てたり、コミュニティを作ることにも何の問題も感じません。
恋愛感情がなければ「偽装」なのでしょうか。寝食を共にし、お互いを助け合い、尊敬し合い、一緒に笑ったり泣いたり、共に子どもの成長を日々幸せに感じるこの関係性を家族と言わずになんと言ったらいいのでしょう。
番組を見られて、友情結婚が気になってこのブログを見てくださっている方もいらっしゃると思います。どうか、言葉の印象に囚われないで欲しいです。

今回の放送を見て、まず友情結婚がテーマとして番組が構成されていることが嬉しくなりました。以前は「恋せぬふたり」というドラマもありましたし、少しずつ注目されている関係性なのかなと思います。
目にすることが増えた分、批判や誤解があることも事実です。一方で、この結婚の形に救われ、日々幸せに生活している家族がいることも、また事実です。
結局は人と人との関係性なのだと思います。どうか、自分の気持ちに真っ直ぐ軸を持ち、納得がいくような友情結婚が増えていくことを切に願います。

sato
著者:佐藤

10代でノンセクシャルを知り、20代で恋愛結婚はできないと断念。一念発起してカラーズに入会後、友情結婚(成婚退会)しました。人工授精で子どもを授かり、現在は夫の高橋さんと協力しながら子育て真っ最中。元友情結婚活動者、結婚当事者のリアルな姿をお届けします。